4月編集後記

 ブログをはじめて、Web業界ではSEO対策が必須であることを初めて知った。今更感が否めないが、臨床看護師にとってSEO対策という概念はほぼ無縁である。しかし人々の情報収集の基本がWebであることを考えると、看護も今後の患者教育方法について大きく舵を切る時がきたと痛感させられる。自分が看ている特定多数の患者には病院でパンフレットやQRコードなどでWeb情報にアクセスするよう促せる。でもその他の人には?…届かない。たとえWeb上に載せていてもその情報はほぼ届かない。なぜなら、みんなが自分の情報を見てほしいので「どうやったらGoogleやYahoo検索で自分の情報が上位に出てくるか」を研究し対策しているからだ。だからこのWebサイトの情報も、分析結果を見る限り膠原病患者にはほとんど届いていない。それが4月に延々と試行錯誤した課題であり、今も取り組む難題である。

 大学ではSEO対策もさることながら、Webサイトの内部構造に配慮が必要だ。受験生獲得の入り口戦略に対する真剣度は各大学のWebサイトを見れば一目瞭然。普通はデザイン重視になるが、デザインだけでなく言葉のチョイスや写真なども各大学で比較するとかなり違う。さらにPC・スマホ・タブレットなどデバイスごとに視認性の配慮が行き届き、情報検索のしやすさと意図的なページ誘導ができているかは非常に重要で、そこに注目してみるとその大学が広報活動にどのくらい予算をとっているかがわかる。18歳人口が減少する中、教育界の入り口戦略はWebサイト作成から始まっていると言っても過言ではない。大きな大学ではTOPページ以外の各学部ページは、その学部に作成をまかせているところもある。そうなったとき…看護学部のWebサイトはだいたいピンクで可愛くて、知りたい情報が見つけにくいという残念なことが多い。臨床看護の実際はピンクで可愛いものとはかけ離れているし、知りたい情報にたどり着けなければ看護師を目指す高校生は減るかもしれない。これは我々看護職が公益性の高い医療職ゆえに「集客」という意識が低いことが原因だと感じる。

 同じことは訪問看護ステーションにも言える。最近友人の訪問看護ステーションのWebサイト作成について相談にのった。共に複数のステーションのWebサイトをみたが、TOPページに患者が欲しい情報がほとんどない。でも自分たちがどんな看護を提供したいと思っているかという情熱はあふれている。寄り添う、心温まる、細やかな、丁寧な、などの言葉がちりばめられたサイトが多い。しかし患者は、具体的に何をしてくれるのかを知りたい。そして、スタッフの雰囲気も知りたい。24時間365日対応と書かれていれば夜はどんなことでも(ベッドにオシッコもれたとかでも)来てくれると思うだろう。「ここ大好きな訪問看護ステーションやねん!」と友人が推したことろでさえWebサイトは残念賞だった。本当に残念だ。いい看護を提供できるのに正しい情報が患者に届かない。

 こういうことは看護師に限らず多くの業界で起きており、悩みの種になっているのだろう。そして実際、今の私の課題でもあるわけで、膠原病患者さんが自己管理するための情報の一助になればと美しい目的を掲げてみたものの、Webサイトにたどり着かなければ一助も何もない。そしてだんだんわかってきたのは、膠原病患者がそもそも自分の生活について検索していないのではないかという疑惑だ。例えば関節リウマチの自助具についての検索はかなりある。でも膠原病の他の疾患は症状以外の検索ワードがあまり挙がってこない。もし検索していないのであれば、抱えている悩みはどのように解決しているのだろうか。抱えている悩みに気づいていないのだろうか。私が一番懸念しているのは、膠原病患者が病気ゆえに心地よい生活をあきらめてしまっている可能性である。もしそうだとしたら、残念でならない。慢性病は自己管理の工夫でいかようにも流れを変えられる。その手伝いをするために慢性病を専門とする看護師たちも沢山活動している。ここの深堀りは私ひとりでは無理そうなので…、沢山いるプロたちとGWに会って話してみよう。

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