膠原病と治療方針の決めかた

 膠原病は全身におよぶ炎症性疾患です。平たく言えば、病気で悪くなるところは全身で、どこにどんな症状がでるかによって診断名が違いますし、同じ診断名でも症状にはかなり個人差があります。このような個人差のある膠原病の治療方針をどのように決めるのか、私の体験をもとに紹介します。

目次

膠原病の特徴

 膠原病は、症状が「全身」に出るというところが他の病気と特徴的に違うところです。例えば肺がんは脳に転移しやすい特徴がありますが、転移しなければがん細胞は基本的に肺で増殖し、息が辛くなります。でも肺限定なので、最初から肺がんのせいで関節が悪くなったり皮膚症状が出たりなど他の臓器に症状がでることはないのです。一方で膠原病は全身に炎症がおきる病気で、最初から全身のあちこちに症状が出ることがあります。膠原病のなかでも関節リウマチは主に関節に炎症がおきるのが特徴ですが、間質性肺炎になったり皮膚潰瘍ができたり、目や口などの粘膜が異常に乾燥したり、実に様々な臓器に症状が出て、人によりこの症状も異なるのです。

 こうなってくると治療方針を決めるのが難しいのは想像できると思います。同じ膠原病でも診断名が違えば治療方針は違いますし、同じ関節リウマチでも人により症状が違うので治療方針は違います。ガイドラインがあるので大きな道筋は立てられていますが、そこに個人の症状や希望を合わせながら治療方針をオーダーメイドしているイメージです。

治療方針の決め方

治療方針は患者によって違う

 同じ病気でも症状の個人差が大きい病気なので、膠原病の友達や関節リウマチの友達と自分の治療方針が違っても不安になることはありません。しっかり主治医と相談して、あなたが治療方針を選んでください。私は初期から主治医が4人交代しましたが、どの主治医もその時点でできる治療についてメリットとデメリットを説明し、複数の選択肢を示してくれました。 

治療に選択肢があるか確認しよう

 私の場合、関節リウマチと診断されてから1年くらい1代目主治医がメトトレキサートを使いませんでした。私は辛すぎたので、主治医に「漢方薬や鍼治療をしてもいいですか?」と聞いたところ快諾され、別の場所で中医学の漢方薬内服と鍼灸治療に切り替えたところ劇的に良くなりました。約4年後に症状が進行したのですが、その時2代目主治医に免疫抑制剤をできるだけ使いたくないこと、漢方薬と鍼灸治療も継続したいことを話しました。主治医は「今の状態であれば、メトトレキサートを使うのが推奨される。早く治療開始することで関節を保護でき、関節変形なしで人生を送れる時間が増える。でも副作用があるのは確かなので、そのデメリットをとれないということであれば、中医学の治療は続けてください。僕はその治療はできないけれど、中医学の先生のところでは間質性肺炎を起こしていないかどうか検査できないでしょうから、大学病院で半年ごとにレントゲンをとりましょう。」と言って私の意思を尊重してくれました。こういう時に「では大学病院で治療はできないので、今日で診察終わりですね」という医師もいるかもしれません。でも患者の人生を第一に考えて医師として最大限できることをしてくれたことに本当に感謝ですね。

治療方針を最後に決定するのは患者

 こんな感じで、今の治療に切り替わるまでに何回もメリット・デメリットを主治医と患者で相談し、いつも私が決定してきました。「最初の4年で治療開始が遅れたかもしれないよ」と言う医師もいるかもしれません。だとしても、その4年間私は納得した人生を送りましたし(実際に今までで一番調子よかったけど)、自分で決めたことなので不満も後悔も残っていません。他人の人生ではなく自分の人生を生きるとは、こういうことかもしれないですね。

 専門知識がある医療者が提案する治療方針は最善と思いがちです。でも治療による様々なリスクを負うのも、治療費を払うのも、辛い症状を感じるのも、患者自身です。苦しんでいるときに医療者は職場で助けてくれたり家事を手伝ってくれたりしません。病気と共に生活するのは自分自身なので、あなたが決めて当然です。納得のいく決定ができるように、十分な説明と選択肢を示してもらってください。患者の意思決定を支援する方法について、今は医療者もだいぶんと教育され日々学んでいます。

 みなさんの治療における意思決定が尊重されますように。

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