入院生活のコツについて連日書いています。退院が決まったら一生懸命歩く患者さんは多いのですが、それでは遅いので、今日は退院日を逆算して歩くことについて紹介したいと思います。
病状が安定したらベッドに寝ている時間よりも座る時間を増やすように看護師から促されると思います。それだけでなく、自分でトイレまで歩いたり、お風呂に入ったりして、だんだんと自分で日常生活を送る体力がつくように練習していきます。点滴がなくなり内服薬だけになり、一人で歩いて良い許可がでたら、病状が安定してきたことの目安の一つです。私はこのころから、主治医に「あとどのくらいで退院できますか?」「どんな風になったら退院ですか?」と聞くようにしています。患者さんによって退院の目安は違いますが、「ステロイド内服の量が10mgになったら退院しましょうか。3日ごとに5mgずつ減らす予定です。」とか「シャワーしたり歩いたあとに息切れがなくなったら退院日を決めましょうか」など様々です。それに合わせて、患者さんが自分でもできることの一つに「歩く」があります。
これはあくまでも退院したら自力で歩いて生活できる人の話です。退院後の自分の生活を想像してみてください。一日どのくらい歩いていますか?実は入院生活中はほとんど歩いていないのです。私は、臨床看護師だったときは一日2万歩以上歩いていましたが、大学教員で実習室で演習をしたり病院実習で病棟に行っていたときは一日1万歩くらいでした。休日で電車に2駅乗って買い物に行きランチをして帰ってきたら7千歩です。でも病院に入院していたら、自分で歩けるようになっても一日千歩も歩きません。何も用事がないからです。こんなことでは、退院後も体力がつくまで時間がかかりそうですよね。
ですから私は自分で歩いていいと言われたらすぐに、「病棟散歩」を始めるようにしています。まずはトイレやお風呂まで歩く、慣れてきたらトイレやお風呂まで遠回りして歩く、それが楽勝なら毎日午前午後に病棟を1周散歩する、それが余裕なら2周に増やす。許可が下りて病院内の外来や売店に自由に行っていい状態であれば、午前午後の散歩の時間と距離を増やしています。ただ階段を組み合わせるのは看護師に相談してください。実は階段は身体的にかなりの負荷をかけるからです。特に間質性肺炎など呼吸器合併症がある膠原病患者さんにとっては危険です。また、膠原病患者は疲労が病気の悪化につながるので、自分でリハビリテーションを行う時は、どのくらいの強度で進めたらよいか理学療法士や医師・看護師に相談して、徐々に体を慣らすことが重要です。もしかしたら、退院後もしばらくは安静が必要な状況かもしれませんから、歩く量を増やすときは相談してください。
退院後の生活は入院生活の4倍くらい体力を使います。食事を例にとると、入院中は座って待つだけでしたが、退院したら、自分で食材を買いにいき、荷物をもって歩き、食事を作り、お皿を洗う、など、食事だけでも4倍以上の作業があります。ですから退院を逆算してまず「歩く」計画をたててみませんか?歩くことは生活の基本になる動作だからです。