膠原病の中には難病の方も多くおられ、現在治療法がないために代替療法として漢方薬や鍼灸治療を受ける方もおられることでしょう。その中で時折耳にするのは、東洋医学(いわゆる漢方薬治療や鍼灸治療)はインチキ療法なのかという不安です。私は日本で一般的に東洋医学と言われるこれらの治療を、「中医学」として40年以上経験してきました。そして私見ですが中医学はインチキ療法ではなく医学です。
あえてインチキ療法と表現したのは、「全く効果がないのにあたかも効果があるようにみせかけている嘘の治療法」という意味を強調したかったからです。時折インチキ療法があることは真実で、効果のないサプリメントや飲料水の存在は周知の事実です。中医学は中国の正式な学校や大学で教育される医学で、主に漢方薬・鍼灸・推拿(マッサージに類するもの)などを治療方法としており、医師免許があります。詳しい説明は専門家に譲るとして、これらの治療が全く効果がないかというとその逆で効果があります。実際、私の倦怠感を完全にとることのできた治療は中医学だけでした。ただ、インチキ療法とみなされやすい原因の一つに、日本で主流の西洋医学のような体系的な試験結果に基づいた治療ではない点があげられます。薬についていえば、私たちが病院で処方される薬は、動物実験や人を対象とした治験などの試験によりその効果が立証されています。しかし漢方薬の効能についてはそれらの試験が行われていないものも多く、何千年も治療に使用してきた経験値の蓄積で「**に効果がある」と立証されてきました。雑に言うと、実験の方法が同じではないため受け入れがたいというところでしょうか。薬のみならずこういった違いは、病気の診断方法や治療方針の決定方法など根本的な部分にもみられるため、インチキと思われてしまうのかもしれません。
私は日本でしか医療を受けたことがないのでちょっとびっくりしたのですが、実は世界では近代医学より伝統医学の方が多いそうです。人間は世界各地でその土地と文化に合わせた医療を経験則で発達させてきたのでしょう。その中には効果的な治療法があるにもかかわらず「なぜ、どのようなしくみで体に影響を及ぼして効果を出しているのか」という根拠が明確にされていないがゆえに、世界に普及できていないものがきっとあるのでしょうね。それらの実態を把握する目的もあって、WHOは2019年に国際疾病分類の中に「伝統医学」という章を追加しています。この流れからも、中医学がインチキ療法ではないことがわかります。
臨床的に言うと、難病が漢方薬や鍼灸で改善する例をよく耳にします。私の経験では、中医学が特に難病に特化した医学であるというよりは、西洋医学の難病治療の研究が道半ばというだけのような気もします。中医学は病気を発症する前から治療しますし、急性期の即効性のある治療をすることも可能ですし、末期の緩和療法もできます。私はどのステージも自分の体や家族の体で経験しました。しかしながら、私は中医学を実践できる医師が日本にはほとんどいないと思っています。日本では医師が中医学の教育を受ける機会が非常に少ないですし、良い臨床医がいても巡り合える機会がほとんどないです。
膠原病で漢方薬治療や鍼灸治療を検討しておられるかたは、必ず今の膠原病の主治医に相談してほしいです。漢方薬も鍼灸もれっきとした治療ですので体に効果つまり影響があります。ということは、違う治療を同時に行うと治療効果が減弱する恐れがあるということです。患者には治療を選択する自由がありますが、その選択が功を奏するためにも、現在の治療とどのようにmixするのがいいのか必ず検討してください。膠原病の多くが一生のお付き合いです。効果的な治療をコツコツ継続することが未来につながります。
納得できる治療に出会えますように。